買物をして代金を払うと店ではレジを使って代金を受け取ると、そこから出てくるレシートをちぎって渡す。今まで当たり前だった日常の遣り取りは、最近では随分変化していますね。いつも行く店では、ポイント持ってますかとか、携帯電話のアプリで精算とか、機械に表示された代金を見て、自分で代金を入れ、レシートも要るかどうかの画面で選べたり。
私といえば、買物は現金が殆どなので、レシートを受け取ってます。でもレジの傍らには、不要レシート入れの箱を見かけますので、その仕組みの店では、レシート要りますかと聞かれたり、こちらからレシート下さいといっ受け取る事も多いですね。
では、私がレシートで家計簿を付けているかといえば、そんな事は無く、いつまでも財布に入れているので、どんどんレシートが財布に溜まり、気付いたら財布を分厚くしているのはレシート、ということがしばしばあります。 こうしたサイクルで財布に溜まるレシートの束をみると、いつも頭に浮かぶものがあります。それは、亀博収蔵の江戸時代のレシート。切紙を何枚も重ねて紙縒で綴じた、正に束なのです(写真01)。

では、江戸時代のレシートにはどんな内容が書かれているのでしょうか。
冒頭は「覚」、代金は「弐拾文」、商品名、この場合は手間賃「御小脇指弐腰ぬくい代」そして、ここが大事な一文「右之通慥ニ請取申候(右の通りたしかにうけとりもうしそうろう)」、日付「五月十九日」、代金を請取った店「とき屋金右衛門」、代金を支払った人名「原仲蔵様」。武士ならではのレシートですね(写真02)。

次は身近なレシートです、冒頭は「覚」、代金は「廿七文」、商品名「とうふ三丁」、そして、大事な一文「右ニ付慥ニ受取申候(右につきたしかにうけとりもうしそうろう)」、日付「五月十四日」、代金を請取った店「京やか兵衛」、代金を支払った人名「かとういつき様」(写真03)。

今のレシートで共通している記載は、代金、商品名、日付、店名でしょうか。今のレシートに無いのは代金支払の人名。今のレシートに大概あるポイントの記載は、江戸時代のレシートには無いですね。
こうしてみると、百五十年以上も前の束のレシートから、物価やどこで買っていたかなど、当時の暮らしぶりや、店が取り扱う商品などを知る歴史資料なのだと改て感じます。
ということは、私の財布の中のレシートの束も、百年後には…。
(小林秀樹 こばやし・ひでき/亀山市歴史博物館)
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写真03は「五月四日」かも知れません。
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