「牧野先生、ぶしつけなお願いですが、どうぞ今回の『牧野富太郎が見た四日市』展が成功しますようにお力をお貸しください」

牧野博士の墓
神頼みなどついぞしたことが無い私が思わず手を合わせて祈ったのは、日本の植物学の父、牧野富太郎博士の生まれ故郷である高知県高岡郡佐川町の牧野公園にある博士のお墓。実は四月から始まったNHK朝の連続テレビ小説『らんまん』のモデルととなった牧野博士と四日市とは少なからぬ因縁がある。四日市で自生しているのが発見された国の天然記念物である梨の原種イヌナシ、アイナシや、楠町本郷(当時は三重郡本郷村)で発見されたホンゴウソウは、いずれも牧野博士が新種として記載・発表されたものだ。
ところで、水族館一筋に40年余を過ごしてきた私が、母親の介護のために実家の四日市に戻り、四日市市立博物館に居場所を得て、はや6年。植物学なんて海藻以外は門外漢だったのに、自然科学系の学芸員だというだけで植物標本にどっぷり浸かるハメになり、最近は植物そのものよりも、古い植物標本の修復にハマっている。折りも折り、市内の楠交流会館から120年前の植物標本970点が移管され、その中の数十点のラベルに『牧野富太郎先生命名』という朱印が押されていたから、さあ大変!
早速これを修復し、市民の皆様に見て頂こうということになったのだ。

会場風景2 高知県立牧野植物園提供
「高知の牧野植物園へ行ってきます!」
自叙伝や様々な本で得た知識しかない牧野博士を知るには、まず生誕の地へ行かねばなるまい。幸いにも高知市五台山にある牧野植物園からは全面的な協力を得ることが出来た。
残念ながら、当時、牧野博士が訪れたであろう四日市の地は、イヌナシ、アイナシの自生地や、記録にある垂坂山以外は知る由もないが、ドラマのヒットと共に、四日市市民が牧野富太郎博士に親しみを持ってくれることを祈ってやまない。

「牧野富太郎が見た四日市 ~120年の時を超えた植物標本~」
令和5年5月7日まで。四日市市立博物館で開催(入場無料)
(森 拓也 もり・たくや/四日市市立博物館)
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