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【桑名市博】華ひらく近代工芸の美―板谷波山と香取秀真―
桑名市博物館 鈴木です。

今回は現在当館にて開催中の特別企画展「華ひらく近代工芸の美―板谷波山と香取秀真―」をご紹介させていただきます。

特別企画展「近代工芸の美」ポスター画像

日本の近代工芸界を代表する陶芸家・板谷波山(いたやはざん/1872~1963)と鋳金家・香取秀真(かとりほつま/1874~1954)は、自身の目指す理想を追い求めて作品の制作に励んだ当代一の美術工芸家です。また、この二人は東京美術学校(現在の東京藝術大学)出身であり、東京田端に住んだご近所さんでもあり、生涯にわたって親しい友人関係でもありました。のちに彼らは帝室技芸員や帝国美術院会員をともに務め、昭和28年(1953)に工芸家として初の文化勲章を二人同時に受章しています。
本展では、学生時代から晩年にいたるまでの代表的な作品の数々を展示しています。卓越した技術によって生み出された珠玉の名品をぜひご堪能ください。

【近代工芸】展示風景(波山作品)

【近代工芸】展示風景(秀真作品)

また、今回は彼ら二人と関わりのある桑名の人物についてもご紹介しています。

1人目は桑名の萬古焼の陶工・加賀月華(かが・げっか/1888~1937)です。月華は大正11年(1922)から本格的な作陶をはじめ、のちに波山に師事して近代の美術陶芸に果敢に挑戦していきました。
今回展示中の作品の中には波山の箱書きを伴うものがありますが、二人の作品を見比べてみると、月華は波山の技術や美意識の影響を強く受けていることがよく分かります。展示室で師弟作品の共演をぜひご覧頂きたいと思います。

2人目は多度の郷土史家・伊東富太郎(いとう・とみたろう/1876~1958)です。
桑名市に寄贈された伊東富太郎コレクションには秀真から届いた書簡が300通ほどあり、富太郎と秀真が書簡のやり取りを通して熱い金工談義を交わしていた様子が分かってきました。中には、伊勢型紙や戦時中の金属回収での梵鐘調査など、三重県の郷土史を知るうえで興味深い内容の書簡類も含まれています。富太郎は山芋や松茸などの地元の食べ物を送っていたようで、グルメな秀真からのお礼状なども届いており、親しい二人の間柄がうかがわれる書簡史料も出品しています。

特別機展覧会「華ひらく近代工芸の美」は11月27日(日)まで開催しています。ぜひご来館くださいませ。

最後になりましたが、秀真と富太郎がデザインを手掛け、桑名の鋳物師・中川祐次によって鋳造された擬宝珠が昭和21年(1946)に多度大社に奉納されました。社殿前に架かる橋の擬宝珠には秀真の銘が刻まれています。桑名へお越しの際にはぜひ多度大社へも足を運んでいただき、注目してみてください。

【近代工芸】多度大社擬宝珠

(鈴木亜季 すずき・あき/桑名市博物館)
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[2022/11/06 22:01] | 未分類 | page top
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