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【三重県博】「寺院に伝わる戦国の残像~北畠氏のいた時代~」
現在三重県総合博物館では、第29回企画展「寺院に伝わる戦国の残像~北畠氏のいた時代~」を今月27日(土)まで開催中です。

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戦国時代の伊勢国における最大の勢力が、伊勢国司北畠氏でした。北畠氏が活躍した時代の様子を伝える数々の資料が、三重県内の寺院には多数遺されています。また、今回の展示では当時の寺院自体の様子も伝えられるようにしていますが、そのキーワードの一つが「真盛(しんせい)」という人物です。

伊勢国に生まれ、京を中心に活躍し、伊賀国に没した天台真盛宗の祖真盛は、戦国時代の幕府や朝廷にもその名を知られた人物でした。その真盛が常に身近に置いていた仏像が、現在、津市成願寺(じょうがんじ)に伝わる重要文化財の阿弥陀如来倚像(いぞう)です。本展のポスターやチラシのメインビジュアルの一つでもあります。

両手を胸前に掲げて説法印を結び、雲上の蓮華座に倚坐して像背に雲をたなびかせた来迎の姿につくるという大変珍しい姿をしています。構造は寄木造で、玉眼を嵌入しており、表面には漆箔が施されています(現状は経年により黒色です)。

ふくよかな顔立ちの小像ですが、各部の造形はしっかりとしており仕上げも丁寧です。台座框裏側に文明十九年(一四八七)の修理銘がありますが、真盛が在世中であり最晩年に当たります。あるいは、本人の依頼によって後補の両手や厨子を含めて来迎形としたのはこの時のことかとも考えられます。

この仏像は、真盛の遺言により朝廷に持ち込まれ披露されたのち、返還されて現在に至るもので、真盛が朝廷や幕府の人びとに人気のあったことを裏付ける、重要な資料ともいえるものですが、本像は普段あまり公開されることはなく、この機会をぜひお勧めいたしたく、お越しくださいますようお願いいたします。

(瀧川和也 たきがわ・かずや/三重県総合博物館)
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内容がてんこ盛りの展覧会、ぜひお見逃しなく!
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[2021/11/21 22:00] | 未分類 | page top
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