はじめまして。多気郷土資料館学芸員の村田と申します。
当館ではこれまで常時在館の職員2名で年4回、テーマを決めて企画展を行ってきました。
一方で、その準備等に追われ、受け入れた資料の整理が追い付かない状態が何年も続いていました。
資料が死蔵状態に陥っている状況を何とか打開すべく、今年度から秋の企画展を1回休み(展示室以外の作業場所がないため)、
資料整理に集中する期間を設けることになりました。
展示中心で回っていた館の活動を大きく転換させたのは、
昨年、NHK大阪からの問い合わせでした。戦時中に活動した国防婦人会の機関紙を探しているが、それが当町以外には見当たらないとのことでした。調べたところ、旧佐奈村(今の多気町佐奈地区)役場の文書群の中に含まれていることがわかりました。

当館とは別の倉庫で未整理のまま眠っていた4万点近くにのぼる同文書の山からようやく該当の資料を数点探し出しました。その資料は残念ながらテレビ放送では紹介されなかったものの、
全国的にも極めて貴重な資料が当町に残っているという事実をあらためて認識できたのは大きな収穫でした。
当町では終戦時や町村合併の際にほとんどの行政文書が破棄された中、旧佐奈村役場文書だけは地元の方の尽力でほぼまとまった形で残されました。同文書は明治から昭和20年代頃までの行政文書です。しかし、それらは保管場所も転々とし、地元の方々からの整理保存の要請に応えられないまま放置され、40年近くが経過しました。

昨年、整理保存に向けて動きだした時、同文書の保存活動の中心になった方から郷土資料館の本来の役割は郷土の資料を大切に保存することで、
展示は二次的なものではないかというご指摘を受けました。
確かにそうだと思いました。今までは、資料館の展示は所蔵資料があるからこそ可能だという当たり前のことを忘れ、見栄えのよい資料を並べ、より多くの来館者に見てもらうための展示にとらわれていました。
当館は常設展がなく、これを目当てに各地から来館するというような目玉的な資料もありませんが、地元の資料は当町の歴史を伝える、
ここにしかない「宝」です。
この宝を大切に保存し、有効に活用していくことが
「郷土資料館」の果たすべき重大な使命であることに思い至ったのです。
つい力が入って熱く語ってしまい、失礼しました。要するに
「原点に帰ろう!」となったわけです。
ということで、10月下旬から多気町郷土史研究会の方々にボランティアで協力していただき、旧佐奈村役場文書の整理作業に取り組んでいます。旧佐奈村役場文書の他にも、整理を待つ資料がまだまだ控えています。
資料整理に終わりはありません。「郷土資料館」としてのあるべき姿を目指してやっと一歩踏み出せたと思っています。
(村田麻美 むらた まみ/多気郷土資料館)
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資料整理に終わりはないですよね(全力同意)
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