前回はハード面について、お話させていただきましたが、今回は展示生物についてお話させていただきます。
基本は各施設の立地場所の自然界の情景が基本となり、あるいは各施設の展示コンセプトによって、決定されます。
収集方法もさまざまで、自家採集、漁師さんからの譲受、業者からの購入、他施設との生物交換または貸出、借用、繁殖による個体の確保などがあります。
近年は、
自家採集の比率が低くなり、すこしさみしい気がしています。
飼育員の原点はその生き物がどんな所に住んでいるか、どういう環境下で生活していることを知る事が大事で、
飼育員にとってフィールド採集が1番の醍醐味であると今でも思っています。
生物の種類も、当時に比べ多様化したのは、物流の利便性が向上し海外の生物も容易に入手可能となっており、日本国内であれば翌日には届くのが通例となっています。また、当時から珍魚、怪魚(日本初展示)を追い求める傾向にあり、さらにはCMなどで話題になるとその生物が一躍注目を集めることは言うまでもありません。
志摩マリンランドでの例をあげると、
ウーパールーパー(アホロートル)
ミズダコの赤ちゃん(CMで紹介)
ハナカケトラザメ(日本初展示、ベルリン動物園水族館との生物交換)
リーフィーシードラゴン(オーストラリアの水族館から輸入)
ランプサッカー(ダンゴウオの仲間、ドイツベルリン動物園水族館より分譲)ウーディーシードラゴン(業者から購入)、パラオオウムガイ(鳥羽水族館から譲渡)、スポッテッドラットフィッシュ(ギンザメの仲間、アメリカの水族館より分譲)、ボアフィッシュ(ヒシダイの仲間、モナコ海洋博物館との生物交換)、カクレクマノミ(ファインディングニモ)、クリオネ(ハダカカメガイ)等があります。
直近ですと、

ドクターフィッシュ体験
は今も人気の展示の一つです。
さらに近年は種によって保護規制の観点から入手が困難になっており、大型動物に至っては、近い将来普通に見られた生き物が見られなくなる種が増えてくることも懸念されています。
そういう状況を打破するために各施設が協力して展示生物の確保のために実施している
「ブリーディングローン」という言葉をよく耳にするかと思います。
今後は繁殖によって飼育展示生物を確保していく種が増えてくるでしょう。
各施設同士の連携協力が必要不可欠になっています。
私も長年魚類の繁殖等に携わってきましたが、飼育員にとってやはり
繁殖研究が一番興味深く、成功の充実感と達成感が得られたように思います。 さらにつづく。
(里中知之/志摩マリンランド)
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里中さんから連載物第2弾をお送りいただきました。歴史や美術の学芸員ではコレクションを増やすことはありますが「繁殖」は経験がないので非常に興味深かったです。
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