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ブログde展示解説その2@刀剣幻想曲
桑名市博物館のK.Mです。

先日から突如として始め始まりました、ブログde展示解説。
「私は『大鏡』を布教したい!」という一念で(ほぼ事実)、村正や出品番号1番の作品を押しのけて「雷除」から紹介するという暴挙をいたしました。(反省はしてません。)
さて、2回目の本日は、11番「短刀 銘 正重(漆塗り)」(桑名宗社蔵)について取り上げたいと思います。
ご興味とお時間がございましたら、お付き合いくださいませ。

※今回も長いですが、ほとんど根拠のない「与太話」です。










この短刀、実際には銘が判別しにくく、本来であれば「短刀 銘 ■重」あるいは「伝正重」とするべきなのかもしれません。
(鞘書には「千子正重作」とあります。)
桑名宗社……春日さんご所蔵の刀剣といえば、三重県指定文化財となっている「太刀 銘 勢州桑名郡益田庄藤原朝臣村正作/天文十二天癸卯五月日」をはじめとした村正と正重の4振がよく知られていると思います。先の大戦(一般的な方)で、お手入れが充分にできないことを見越した当時の神職様によって刀身に漆が塗られ、神社から疎開されたために戦禍を逃れたと伝わる刀剣です。
特に太刀の村正はNHKさんで「漆黒の村正」として取り上げられ、「漆黒の村正 よみがえる名刀」という、文化財を守り伝えるとは、ということを考えさせられる特集番組も制作されました。
因みに、同番組は4月2日の深夜(日付上は3日)にBS1で全国放送されるそうです。(NHKの番組表はこちら
この「漆黒の村正」たちは本来であれば今頃春日さんで特別公開されていたはずなのですが……新型コロナウイルスめー!(*`Д´*)
特別公開は8月に延期されたそうですので、よろしければぜひ春日さんへお参りください。ただし、夏の桑名は暑いですので、みなさま重々お気をつけを。

漆塗りの短刀正重は、平成29年度に当館で開催いたしました「刀剣日和」展で一度公開させていただきました。ぷっくりたなご腹の茎。刃文や地鉄は塗られた漆のために分かりません。
春日さんのTwitterでお写真が公開されていたり、漆を研いだ村正・正重の写しを作るクラウドファンディングのプロジェクトのリターンにあった図録に掲載されたりするようです。(なお、上記プロジェクトは3月22日に終了しています。)


ここからは、令和元年10月に春日さんで漆を研いだ村正・正重の特別公開が行われた時に解説を伺ってから私が想像している内容です。

特別公開のあの日、興味深いお話を聴いていて、一番はっとさせられたのが
漆は乾くのに時間がかかる
ということでした。
蒔絵などはその時間を利用して制作されるのでしょうから、考えてみれば当たり前のことです。
けれど、漆を扱うことに馴染みのない私には、その「当然のこと」が分かっていませんでした。

そこでふと、思ったのです。
この村正や正重に漆を塗った当時の神職様は、この長大な刀身に漆が塗れただろうか、と。
桑名盆などがありますから、漆自体は入手できたでしょう。
けれど、神職様のお仕事で、ご自身で漆を扱うことはそうないのではないでしょうか。
私と同じように、漆の扱いに詳しくはなかったのではないでしょうか。

「漆は乾くのに時間がかかる」と知っても、私は「鉄に漆を塗った時、どのような環境下で乾くのにどれだけ時間がかかる」ということを具体的には知りません。
漆の濃度(?)もあるでしょう。
漆を扱い慣れない身で、いきなり大切な太刀や刀に漆を載せる。
よほど追いつめられたとしても、私にはおそらくその勇気は持てません。
私ならば、せめてもう少し扱いやすい、そう。短刀などで先に試してみることでしょう。

漆を研がれた刀身と、まだ漆に覆われた刀身を拝見しながら考えました。
この4振に先立って、あの短刀は漆が塗られたのではないか、と。
自分の手で漆を塗れるものか、乾くのにどれくらい時間がかかるものかを試しながら、当時の神職様はこれが最善の道かと自問自答し、ご神宝を守る術が他にないか模索なさっていたのではないだろうか、と。

根拠はありません。
同じ時に漆が塗られたのかも分かりません。
想像というより、妄想とでもいうべき話です。

そして本当は、短刀の正重が最初に漆が塗られたのかどうか自体は、さほど重要なことではないのかも知れません。
ただ、伝えられてきたご神宝を遺そうと尽力なさったそのお心に頭を垂れるだけです。



……というようなことを話したら、S.Aさんに「紀要に書きましょう!」と言われてしまいました。
先にも書きましたように根拠も何もあったものではない「与太話」ですので、丁重にお断りいたしましたが。



閑話休題。


現在、私たちが様々な文化財を目にする(場合によっては手にする)ことが叶うのは、多くの場合、たくさんの先人たちがそれを伝えるために「最善」を尽くしてきたからだと思います。
もちろん、その「最善」は時代によっては変わることもあります。
けれど、少しでも良いカタチで、永く未来へ伝われと、願い、祈り、常に「最善」とは何かを考えるのが文化財に携わるものの、今も昔も変わらぬ役目ではないかと、私は思います。
みなさまにその価値をお伝えすることも、永く伝えていく上で大事なことのひとつですね。



折しも今年は、文化財保護法が制定されて70年。
新型コロナウイルス感染症の所為で、今はミュージアムへも気軽に足をお運びいただきにくいところではありますが、文化財を守り伝えるとはどういうことか、少しだけでも関心を寄せていただけますと、学芸に関する世界の端っこにいるひとりとして嬉しく思います。


そして、桑名市博物館ではこの秋、文化財保護法制定70年記念企画展として、「三重刀剣紀行 ー村正の煌めきー」の開催を予定しております。(宣伝)
また、MieMu(三重県総合博物館)でも同じ頃に刀剣展示を予定しているとのこと。(こちらも宣伝!)
詳しくは各ホームページなどで追々情報が発信されると思いますので、暫しお待ちください。

令和2年の秋は、三重県で刀剣の展覧会をお楽しみください!!


願わくば、その頃には新型コロナウイルス感染症が落ち着いていて、みなさまと刀剣鑑賞を心から楽しめる状況になっていますように。
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[2020/03/28 23:28] | 未分類 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
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