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刀剣と水
内藤直子・吉原弘道『もっと知りたい 刀剣 名刀・刀装具・刀剣書』(東京芸術、2018)の中に興味深い記事を見つけました。

p36のコラム「刀工伝説と井戸」です。

その中で三条宗近が知恩院の井戸を焼き入れに用いたので「一名刃の水ともいふ」と伝えられ、京都の地下水は軟水であるため焼き入れには好ましいと記されていました。


あ。


じゃあ村正が焼き入れに使用したと思われる桑名・上野の水はどうだったんだろう。


早速調べてみることにしました。

桑名市の水については桑名市上下水道部のHPから確認することが出来ます。

まずこちらの地図で「水道水及び原水水質検査地点」を確認しますと、いわゆる上野御膳水は上野浄水場がその地点にあたり、


7 西部水源系 上野浄水場
14 町屋水源系 上野浄水場


の2つがそれに当たりそうです。

水源系については、「平成30年度 水質検査計画」の中に説明がありまして、

●西部水源系
[原水の状況]原水は、鈴鹿山系の地下水を浅井戸8箇所により取水し原水としています。

●町屋水源系
[原水の状況]上野浄水場の原水は員弁川の伏流水を集水管により町屋水源地で取水しています。

となっています。いずれか、あるいは両方が作刀に使用されていた可能性が考えられます。


さて、問題の硬水と軟水についてですが、水質検査項目の説明の中にありまして、39番の「カルシウム、マグネシウ
ムなど(硬度)」の検査項目がこれに該当します。その中で

120㎎/L以下が軟水、120㎎/L以上が硬水とされる。

とあります。

それでは両水源の硬度はどうでしょうか。

桑名市 水道水及び原水水質検査 平成30年度年間計画検査項目一覧表から、39番の「カルシウム、マグネシウムなど(硬度)」は年1回調査がなされており、直近は平成30年7月に実施されていたことがわかります。

その調査データを確認しましょう。

●西部水源系 単位 [mg/L]  
1号井 73
2号井 79
3号井 72
4号井 72
5号井 使用中止
6号井 71
7号井 79
8号井 71

●町屋水源系 
上野浄水場着水井 73

すべて軟水となります。まぁ日本は軟水ですので当たり前といえば当たり前なんですが…。(また、比較してみますと多度地域は30前後と他地域の方がより軟水)


いずれにせよ、刀剣製作においては水もまた重要視される要素でした。


最初に紹介しました『もっと知りたい 刀剣 名刀・刀装具・刀剣書』にも中島来や虎徹が使用したと伝わる井戸があることが紹介されており、遺跡として鍛冶場より比較的跡をとどめやすかったことも刀工と井戸を結びつけているといえるでしょう。


秋水、という言葉があります。森記念秋水美術館さんの名前にも使用されていますし、最近はロロノア・ゾロの持つ刀剣として知られていますが、これは秋の頃の澄み切った水の流れを指す言葉であると同時に、転じて

曇りなく研ぎ澄ました鋭利な刀

という意味があります。(『広辞苑』第6版)

刀剣と水というのはやはり切っても切れない関係なのかも知れません。
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[2018/12/12 12:00] | 未分類 | page top
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