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【四日市博】絵本
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 今でもその情景が目に浮かぶのだが、幼稚園の頃、先生が宮沢賢治の『注文の多い料理店』の読み聞
かせをしてくれた。話が面白くて、怖くて、次はどうなるんだろう、何が隠されているんだろうとドキドキしながら、遊戯室の窓の外の木が生きているように動くのを眺めていた。

 そして大人に成って、この物語の絵本を見つけた時、ためらわず買い求めた。以来、この絵本だけで数冊。同じ物語ばかり集めるよりも、いろいろな絵本を集めた方が新鮮で楽しく変化に富んだ世界がひろがるのに、と思わなくはないが、これはこれで面白い。一つの物語から、それぞれの絵本作家が展開するイメージ世界の違いが見られるし、また自分の想像した世界との違いも同時に味わえるからである。

 絵本を比較すると(職業柄どうしても比較し、調査し、研究する癖が抜けないので)、絵にしている場面は多少の違いはあっても、ほぼ共通していると言ってもいい。ただ「すっかりイギリス兵のかたち」と表現された、主人公である二人の若い紳士のスタイルが、それぞれ異なって衛兵風やハンター風だったり、何よりも山猫たちのたくらみがバレて正体を現す、物語の中心となる恐怖の場面の表情が各作家それぞれに工夫を凝らしていて楽しめる。

 クラシックのコンサートが同じ楽譜を元に演奏しているにもかかわらず、指揮者や演奏家たちの違いによって、それぞれに異なった表現世界を楽しむのと同じようなことなのだろう。こちらに楽しんでしまおうという意欲があればある程、楽しさは増すに違いない。

 そう言えば、国宝中の国宝《源氏物語絵巻》(12世紀前半/徳川美術館、五島美術館)も、アートディレクターとも言うべき幾人かの貴族のもとで、当時第一級の宮廷絵師や書家たちがチームを作り、それぞれ異なった場面を選んで競い合った成果と言われている。
 ひとつの芸術作品から、また別の人々の想像力の成果として幾つものバラエティに富んだ芸術作品が生まれていくことも、実に楽しいことなのではないだろうか。「想像力」から「創造力」へ。

(吉田 俊英 よしだ・としひで/四日市市立博物館)
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[2023/08/22 23:00] | 未分類 | page top
【桑名市博】桑名盆の展覧会を開催しています
三重県桑名市のある家にて

息子「おかーさーん、夏休みの宿題で桑名の歴史とか文化について調べないといけないんだけど、何について書こう?」

母「なにあんたまだそんな宿題残してたの?そういうのは早くやっておかないと。そしたらほら、8/5,6で開催してた石取祭について書いたらいいんじゃない?」

息子「石取祭、確かに楽しかったなぁ。でもみんな書きそうだから他ので書きたい」

母「他のってあんた…。そしたら桑名盆は? うちにもあるよ、蕪の絵が書いてある丸いお盆。桑名市の伝統工芸品にも指定されてるよ」

息子「桑名盆か、よく使ってるよね、いいかも。でもお母さんそのお盆のこといつもかぶら盆って言うよね?桑名盆とかぶら盆って一緒なの?」

母「桑名盆の中でも、特に蕪の絵が書かれたお盆をかぶら盆って言うのよ。最近は蕪の絵が描かれているものがほとんどだから、桑名盆=かぶら盆ってイメージが強いけどね」

息子「ふーん、じゃあ蕪じゃないのもあるんだ」

母「うん、桑名盆自体は中世頃から製作されていたと考えられるそうだよ。なんの飾り気もないものもあれば、草花とか鳥とか、流水模様とかが描かれた高級品もあったんだって。そういうお盆には赤、黄、緑、黒色の漆や、銀粉が使われたりして華やかだったのよ」

息子「そうなんだ、でもそんなの見たことないよ。お母さんは見たことあるの?」

母「桑名市博物館で7月19日から『かぶら盆?それだけじゃない 桑名盆』っていう桑名盆の展覧会が始まってて、そこで見てきたのよ」

息子「へえ、なんで蕪の絵ばっかりになったの?」

母「なんかね、江戸時代に松平定信さんが、画家の谷文晁に蕪の絵を描かせて将軍様に差し上げたことがきっかけって言われてて、お母さんもそうだと思っていたんだけど…」

息子「松平定信なら歴史の授業に出てきたよ!江戸時代に幕府で『寛政の改革』を行った人でしょ。“しっそけんやく”を推奨したって。谷文晁はお抱えの絵師だったんだよね?」

母「あんたよく知ってるね。そう、質素倹約ね。でも実はこの谷文晁云々の話は色々と混同されて伝わっているみたいで、桑名ではそれより前から蕪の絵が描かれていたそうなのよ」

息子「へえ、なんでそんなことが分かるの? そもそも定信さんが蕪の絵を描かせたって言われるのはなんで? 定信さんの好きな食べ物が蕪だったの?」

母「全部私に聞いてたら宿題の意味ないやん!『かぶら盆?それだけじゃない 桑名盆』展に行ったら解説パネルがあるから見ておいで。それから、花鳥が描かれた盆も見ごたえあるけど、かぶら盆も色々なバリエーションがあるから。桑名盆の特徴的な塗りの『イジイジ塗り』も実際に見られるし。」

息子「そうなんや。桑名盆の歴史や特徴が全部わかるんだね」

母「会期は8月27日(日)までだから、早めに行っておいで!」

息子「分かった分かった。行ってくるよ」


「かぶら盆?それだけじゃない 桑名盆」
休館日:毎週月、火曜日
開館時間:午前9時30分から午後5時まで(入館は午後4時30分まで)
入館料:高校生以上150円、中学生以下無料

同時開催「刀剣セレクションⅡ—メイクデビュー桑名—」
刀剣展示解説 8月19日(土) 
いずれも午後1時30分から。
予約不要、入館料のみで参加可能。

白鞘南海(しらさや・みなみ/桑名市博物館)
[2023/08/16 23:55] | 未分類 | page top
【朝日歴博】朝日町教育文化施設の施設管理について。
朝日町歴史博物館の片山です。

連日30度以上の猛暑で気力も体力も奪われていますが、博物館及び図書館の複合施設である朝日町教育文化施設では、子どもたちの夏休みイベントが目白押しのため、職員は暑さに負けず頑張ってくれています。

この忙しい時期に当館では「重大事件」が発生いたしました。

夏休みイベントを開催する会場でありました視聴覚室のエアコンが故障してしまったのです。
7月中旬頃から急に空調が停止する事があり、業者に対応してもらいながら、だましだまし使用していましたが、先日ついに動かなくなりました。
開館から25年以上経過しており、修理するにも部品が無く、新しく更新するしか手は無いと言うことで、現在業者に見積書を依頼しているところです。

財政担当課にはすでに状況報告済ではありますが、財政改革を推進している最中の事なので、財政担当課の心中を思うと申し訳ない気持ちになります。

空調が故障してしまったとはいえ、夏休みの宿題用として考えている子どもたちの事を思うと「手作り絵本教室」等のイベントを簡単に中止することはできません。

このため、職員総出で普段エントランスとして使用している箇所を急遽パネル等で囲って対応することとしました。

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 なんとか無事に最初の教室を終えることができたので、胸をなでおろしています。
 皆さんの館でも施設管理には苦慮されていると思います。
 空調等が壊れないことをお祈りいたします。

(片山裕之 かたやま・ひろゆき/朝日町歴史博物館)
[2023/08/07 22:00] | 未分類 | page top
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