夏の企画展「集まれ! 三重のクジラとイルカたち」は9月11日(日)で終了いたしました。期間中ファミリー層を中心に多くの方に観覧いただきありがとうございました。次の秋の企画展「三重の円空は10月8日(土)から12月4日(日)まで開催いたします。
江戸時代初期、僧侶円空は仏像を造りながら諸国を旅し、彼が彫った仏像は「円空仏」と呼ばれ、現在五千体以上が確認されています。その多くは岐阜県と愛知県にありますが、三重県には仏像のみならず円空が描いた絵画がまとまって残されており、他県には無い特徴があります。延宝2年(1674)の夏、円空は志摩地方を訪れ大般若経を補修し、その際、見返し部分に釈迦説法図を描いています。最初は各尊(如来や菩薩)を丁寧に描いていますが、やがて奔放な構図へと変化していきました。この企画展では、志摩地方の円空作大般若経見返し絵全点を展示し、作風の変化の様子をご覧いただけるようにいたしました。また、志摩地方滞在後に「円空仏」も初期の丁寧な作風から「木端仏」と呼ばれる独自の作風への変化が見られるようになりました。このように志摩地方は、彼の作風の変化を考える時、重要な役割を果たした場所かもしれません。 恥ずかしながら、私が僧円空を知ったのは京都にいたころに見た、テレビドラマ:十津川警部シリーズ43「伊勢志摩殺人迷路~円空の謎~」(TBS 2010年)とそのモチーフとなった西村京太郎の「近鉄特急伊勢志摩ライナーの罠 :祥伝社文庫 文庫 2012/2/4発刊」を読んだことでした。このドラマは最近でもたまにBSやケーブルTVなどで再放送されているので、ご覧になった方もいると思います。ドラマの方では幻の円空の色彩画をめぐるストーリーとなっていますが、小説、ドラマとも円空にかかわる仏像や絵画、伊勢、志摩などの描写が盛り込まれておりそれなりに楽しめる内容です。 ちなみに西村京太郎はトラベルミステリー作家としても有名で、今年(2022年)に亡くなるまで多数の小説を書いています。特に十津川警部シリーズはすべての在京キー局がドラマ化しており、計16名の俳優がこれまでに十津川警部を演じています。私はそのほとんどを見ておりますが、TBS系の渡瀬恒彦の十津川警部と伊東四朗の亀井刑事の組み合わせが小説のイメージに合っているように思います。 それはさておき、是非、秋の企画展「三重の円空」に来館いただき「円空仏」、「大般若経見返し絵」を堪能いただければと思います。来館お待ちいたしております。 (守屋 和幸 もりや・かずゆき/三重県総合博物館) |
代打で失礼いたします。
先日、関西大学で開催されました講談師・神田伯山師匠、河内國平刀匠の講演会に参加致しました。 ![]() 関西大学博物館では國平刀匠の作刀にならび、先祖にあたる河内守國助も展示されていました。 ちょうど現在、当館の刀剣セレクションにて國助を展示しており、大変勉強になりました。 さて講談ですが、伯山師匠が披露された「正宗の婿取り」で村正が登場します。 史実では村正は正宗の弟子ではないのであくまで「講談」なのですが、それでも実際あったように思わせる話芸はやはり伯山師匠の腕前の素晴らしさだと改めて思いました。 その講談中、村正の斬れ味の鋭さがカギを握るのですが、はたして村正はよく切れるといいますが実際はどうなのでしょうか。 一つのヒントとして、研師永山光幹氏の話に、 実際に研いでみるとやはり他の刀と異なる点があります。 よく切れる刀です。 しかも荒々 しい切れ味です。 古名刀などですと、研いでいて知らず知らずのうちに手に食い込んでいて、血をみてはじめて痛みを感じますが、 村正はこれと対照的に切ると即座に痛みを感じます。このことは、刃が硬ければ何でも切れるということではなく、鍛錬によって刃味も切れ方も異なってくるという一つの証拠だと思います。 大野正『日本刀職人職談』光芸出版、1994、61頁 とあるように利刀であることを認めつつ、古名刀とは鍛錬に相違があるとしています。 また本阿弥日洲氏も、 切れるといえば、すぐに思い出されるのが、妖刀として名高い村正でしょう。 同書、48頁 と述べており、やはり斬れ味を評価しています。時代を代表する研師が仰られる以上、どうやら村正は良く斬れる、と判断してもよさそうです。 その利刀・村正ですが、現在、桑名市博物館では1振(撮影可)を展示していますのでぜひご来館ください。 また当館の村正は現在岐阜県羽島市の不二竹鼻町屋ギャラリーでも展示してますのでそちらもあわせてお楽しみください。 (杉本 竜 すぎもと・りゅう/桑名市博物館) |
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