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ブログde展示解説番外編@刀剣幻想曲
桑名市博物館のK.Mです。
好き勝手書いております「ブログde展示解説」。
3度目なら、そろそろ村正の話……だと思いました?
実は私もそう考えていたのですが(三度目の正直? ということで。)、なんとなく番外編を挟もうかと。

ということで、今回は「刀剣幻想曲」展の裏側のお話を少しさせていただこうと思います。
(因みに、「刀剣幻想曲」の担当は別の職員です。)


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[2020/03/31 22:47] | 未分類 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
ブログde展示解説その2@刀剣幻想曲
桑名市博物館のK.Mです。

先日から突如として始め始まりました、ブログde展示解説。
「私は『大鏡』を布教したい!」という一念で(ほぼ事実)、村正や出品番号1番の作品を押しのけて「雷除」から紹介するという暴挙をいたしました。(反省はしてません。)
さて、2回目の本日は、11番「短刀 銘 正重(漆塗り)」(桑名宗社蔵)について取り上げたいと思います。
ご興味とお時間がございましたら、お付き合いくださいませ。

※今回も長いですが、ほとんど根拠のない「与太話」です。





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[2020/03/28 23:28] | 未分類 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
ブログde展示解説その1@刀剣幻想曲
桑名市博物館のK.Mです。

新型コロナウイルス感染症拡大防止のために臨時休館してひと月ほどが経ちました。
お待ちいただいているみなさまには申し訳なく思いつつ、安全にお楽しみいただいてこそ、の展覧会です。
臨時休館している各ミュージアム(もちろん当館も!)の開館を今暫くお待ちいただけますと幸いです。


それはそれとして。
当館であれば、本来なら「刀剣幻想曲」展を3月7日より開催していたはず。
3月22日に予定していた展示解説も当然ながら中止になりました。
仕方のないこととはいえ、実に残念です。
……ということで、変則的ではありますが、展示解説でお話しようと考えていた内容から少しご紹介させていただこうかと思います。
ご興味とお時間がございましたらお付き合いください。



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[2020/03/26 19:28] | 未分類 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
ビジツカンの道具 第10回 「調書/点検票」─画力が問われる道具です─
佐々木耕成展開催の余波が冷めやらぬ中、締め切りを仏(ぶっ)恥(ち)義(ぎ)理(り)で入稿しているため編集担当であるO学芸員の顔色が気になるこのコラム、記念すべき第10回目(通算12回目)は、「調書/点検票」です。

今まで色々な道具について、毎度バカバカしいお話をつらつらと書いてきました。思えば恥かしい人生を送ってきたものです。色々なところから「そろそろネタ切れ?」との声も聞こえてきますが、ご紹介しなければいけない道具はまだまだございます。とりわけ今回の「調書/点検票」は我々ガッゲーイン(熊本弁)の仕事の根幹をなすものといっても過言ではございません。

12_第10回図版
写真:調書の例(赤ペンで記してあるのは後で清書したからです)

 「調書」などというと、なんだか警察の取り調べの際に、近隣の定食屋から取り寄せたカツ丼(味噌汁付き)をかきこみながら、故・左とん平扮する古参の刑事(開襟シャツ着用)に書いてもらうものといったイメージですが、我々のはやや異なります。作品を拝見して、その作品に何が/どのように描かれているのか、その裏面はどうなっているのか。さらにはどんなものが付属しているのか。そんなことを書き込んでいくのが、我々が使用する調書なのです。対して点検票は、主に他館やご所蔵者から作品をお借りする際・返却する際に用いるもの。作品の状態に特化した調書と位置づけられるでしょう。

我々が作品を借用・返却する際に行う作業は、基本的にレンタカーと同じ。この辺に傷がある、とか、この辺の絵具が剥げている、とか、あるいはこの辺に画家の怨念がつまっているとか、そんなことを借用時に点検票に書き込んでおいて、返却時にはその点検票と比較しながら、御所蔵者や借用元の学芸員と一緒に、新たな損傷がないか確認するのです。もし返却時に新たな損傷が見つかったら、あるいは怨念が増大していたら…その後のことは皆まで申し上げませんが、まあ、とってもたいへんなことになります。霊媒師呼んだり。

 さて、調書といっても、特に館で決まった書式があるわけではなく、各ガッゲーインが個人的に作ったもの(大体は似たようなものですが)を使用しています。おおよその項目は、日付、作者名、作品名、制作年、品質形状(技法)、寸法、所蔵先、図様、状態、付属品、所蔵先など。点検票の場合は図様と状態が一つにまとめられ、付属品の項目が大きくなっていることが多いです。それらの項目に従って、我々はできるだけ詳細かつ簡潔に記録を取ってゆきます。ガッゲーインの中には、そうした情報とともに作品にインスパイアされたポエムやキュートな子猫のイラストなどを書き込む方もおられるかもしれません。

この調書、意外にガッゲーインの画力が問われる道具でもあります。既に他の展覧会に出品されたことのある作品なら、ワードで作った調書に図録からスキャンした画像を貼っておいて、そこに書き込んでいくというのが定番。しかし写真すらない未知の作品の場合、そもそも調書に貼りこむ画像がございません。そんな場合は、絵を描くしかないのです。油絵の場合であれば、四角く額を描いて画面を描いて、さらにその画面の中にモチーフを描いて…などといったように。我々も時折、別のガッゲーインによる調書をもとに作品をお借りしに行くこともあるのですが、稀にその人が描いた記録図があまりに前衛的過ぎて理解出来ないといったこともあったりします。きっと私なぞよりレベルが高いのでしょう。

さらに困るのが、点検が完了した後に相手先の学芸員から突然「その調書のコピー下さいますか?」と言われることです。確かにこの方法、所蔵元と借用先の間で状態についての記載に齟齬がなくなりますし、貸出側では記録する必要がないので、非常に効率的です。しかしそれは同時にガッゲーインによる前衛的な絵画作品を知らない相手に開陳するという悲しい状況をも意味しております。子猫のイラストなんぞを描いた上で「ここにキズがあるのニャ❤」「ここを持つと危ないのニャ❤」などと記していたら、もう大変。相手は「…結構可愛いイラストを描かれるのですね」などと薄笑いを浮かべながらフォローして下さるのかもしれませんが、「…」の部分には明らかに(うすらデカくてこんなに毛深いくせに)といった侮蔑のニュアンスが込められることになるのです(一部実話)

本コラムを執筆しております本日(10月25日)は、一階展示室で「松本零士展」の展示作業が行われております。先ほど様子を見に行ったところ、会場最後のコーナーに「松本零士漫画作品年譜」なるパネルが4枚ほど掲示されておりました。なるほど松本先生はこんなに作品を描いておられたのか、と感心する一方で、どのパネルの右端にもキュートな子猫のイラストが。お名前は「ミー君」とおっしゃるのだとか。おへその部分に描かれたバツ印の絆創膏がなおさらキュートさを引き立てております。松本先生は御年80歳、つまり左とん平とほぼ同い年です。老いてなおキュートさを維持しておられる点はぜひ見習うべきでしょう。今後は私も他館のガッゲーインのまなざしを恐れず、調書に堂々とキュートな子猫のイラストを記してゆくべきなのかもしれません。ドクロマークのニットキャップを被って。

初出:『熊本県立美術館だより View』167号 2018年12月
*****
とりあえず『西遊記』で西田敏行派でなかったことだけは確認しました。確実な左派(左とん平派)ですね。
調書は多分各館それぞれなんですよ。ウチもオリジナルで、それぞれのお作法があるものです。みたいですねえ「はじめての検品」…。業界視聴率高いですよ絶対。それかyoutubeでやればいいのか。学芸系youtuber…←需要ないやろ

あとこれで大好評連載いただいておりました『ビジツカンの道具』はこれにて最終回です。ご愛読ありがとうございました。
リンダ先生の次回作にご期待下さい!
[2020/03/17 23:00] | 未分類 | コメント(0) | page top
伊勢商人 川喜田家への手紙@石水博物館

桑名市博物館S.Aです。

当初では3月7日より「刀剣幻想曲」を開催予定ではございましたが、
当館は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、現在臨時休館中でございます。
開幕してお客様をお迎えできるよう、一日でも早く事態が収束することを願うばかりです。

石水博物館では展覧会開催中とのことで、先日見学してまいりましたので、ご紹介したいと思います。

「伊勢商人 川喜田家への手紙-数寄(好き)のつながり-」

IMG_2241.jpg

川喜田家伝来の書簡から、文芸活動の幅広い交流の様子を紹介する展覧会です。

歴代当主の交友関係もパネルで紹介されていますが、
そのネットワークは松阪や桑名だけでなく、京都や江戸まで広がっています。

特に、十六代・川喜田半泥子がまとめた《近世名家書簡貼交屏風》では、
本居宣長や谷文晁などのビックネームの人々をはじめ、
川喜田家ゆかりのお手紙を六曲の屏風全体にぎっしりと貼り込んであり、圧巻でした。
(会期中に展示入れ替えがあり、右隻は前期2/22~3/22まで、左隻は後期3/24~4/12まで展示しています。)

江戸時代の手紙というと、展示されているのはくずし字で書かれた文書です。
・・・くずし字が読めないから内容が分かるか不安だわ・・・。(´;ω;`)
とお思いの方もいらっしゃるのではないかと思いますが、心配はご無用!
翻刻文を入れたファイルが館内に用意されていますので
手元で翻刻資料と照らしながら、手紙の内容を読む事ができますよ。
文書を読んでもらいたいという学芸員さんの熱意を感じました。

手紙の内容解説が丁寧でしたので、文字量に圧倒されながらも、とても楽しく拝見させていただきました。
電話やインターネットが普及して、通信手段などが変化した現代とは少し感覚は違うのかもしれませんが、
モノをめぐる文化人たちの想いは、今の私たちも共感できる部分があるのではないかなと思います。
一次史料を読む醍醐味も味わっていただけるかと思いますので、おすすめの展覧会です。



「伊勢商人 川喜田家への手紙-数寄(好き)のつながり-」
期間:令和2年(2020)2月22日(土)~4月12日(日)
場所:石水博物館(三重県津市垂水3032番地18)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)

石水博物館HP
http://www.sekisui-museum.or.jp/exhibition/kaisaicyu.html
[2020/03/17 08:35] | 未分類 | page top
ビジツカンの道具 第9回「ボイスレコーダー」
もうすっかりご無沙汰なこのコラム。第何回目かも既に忘却の彼方ではございますが、今回のテーマは「ボイスレコーダー」です。「ん?前回の予告で“ヘルメット”ち書いてあったじゃなかか!約束と違うバイ!」と思われたアナタ、鋭いですね。嫌われますよ。確かに私はそのように記しましたが、笑いどころがどうも思いつかないという致命的な欠点があり、急遽テーマを変更させて頂いた次第です。どなたにもご迷惑をおかけしてはいないと思いますが、芸能界の不倫報道の例に倣いこの場を借りてお詫びいたします。

11_第9回図版

このコラムを通して、私は調査調査と繰り返し書いておりますが、その対象は必ずしも美術作品・歴史資料のみではありません。作品であれ資料であれ、その背後にはほぼ「制作者」が存在します。美術品の場合は作家さんがそれにあたりますね。では、ある作品について調べていて、しかもその作家さんがご存命の場合どうするのか。直接会って聞きゃ早いわけです。そして、そんな時に大活躍するのが、このボイスレコーダーなのです。

作家さんや関係者から話を聞き、その内容を記録すること。これは一般的に「聞き取り調査」と言います。またそこで語られた内容は、「オーラル・ヒストリー(口述による歴史)」と呼ばれます。通称「オラヒス」。このオラヒス、語る側の主観が強く反映されることや、記憶違いがあることから、美術史研究においてはあまり重要視されてはきませんでした。しかし近年では資料としての価値が見直され、オラヒスを集めたサイトまでもが作られているほどです。調査に出かける際、「課長、ちょっとオラヒス録(と)ってきます」、「◯◯先生の家でオラヒスってきます」などと言うとカッコいい気もしますが、必ず上司から「“おらひす”ちゃ何な?」と聞き返されて「…き、聞き取り調査っス…」と小声で言い直すのがオチですので、あまりオススメはできません。

私が本格的に聞き取り調査を始めたのは、「画家たちの上京物語」展の準備においてでした。あの時は数多くの関係者にお話を伺いましたが、最も長く聞き取りをさせて頂いたのが浜田知明先生です。主に伺ったのは、学生時代の話。当時を懐かしそうに、そして楽しそうに話される先生の様子は、「戦争の画家」とはまた異なる側面を見るような気がしてとても興味深いものでした。そうして得られたオラヒスは同展図録に収録させていただいております。在庫が余りまくっておりますので是非購入して頂きたい!この経験に味をシメた私は自前でボイスレコーダーを購入し、積極的に聞き取り調査を行うことにしたのです。

私が購入したボイスレコーダーは一番安いモノ。もちろん音楽制作にも使える超高級品もございますが、私はミュージッシャンではございませんので、安物で結構です。ただし、時に聞き取りの現場がじぇいぽっぷを大音響で流す喫茶店だったりすることもありますので、マイクの感度が良いことは重要ですね。「Choo-Choo TRAIN」をBGMに80歳近い作家が語る戦後美術秘話というのも、それはそれで趣がございます(実話)。

さて、ボイスレコーダー及びオラヒスには大きく分けて2つの欠点があります。まずひとつは、先にも書いたとおり「客観性に欠ける」ということ。しかしこれはカバーが可能です。例えば、ある方が「いやあ、当時女子大生たちの間で“僕とランチをする会”ってのがあってさあ…」とおっしゃった場合。怪しい。どう考えてもこれは怪しい。そんな時行うのは「裏取り」の作業です。文献を調べたり、あるいは別の関係者に聞き取りをしたりして、本当にそうだったのかを検証していくのです。そしてその結果、会の存在はともかく確かにものすごくモテていたことが判明したりもします(実話)。

そしてもうひとつの欠点が、文字起こしをしなければならないことです。資料としての活用、あるいは公開を前提とするならば、文字化は避けて通れません。もちろん、文字起こしをやって下さる業者さんもおられますが、そんな予算は当館にはございません。結局頼れるのは自分のみ。録音時間は1時間半から3時間半で、短いときならば3日で文字起こしが完了することも出来ますが、時には10日間ほどを要することもあります。しかもその間には他の業務も入ってきます。長時間文字起こしをしていると、頭も体も極端に疲弊しますが、次第にオラヒスが体に刻まれてゆく感じがたまらなくなってくるのも事実。そうして今日も文字起こし作業が続くのです。
美術館の事務室を訪れた方、イヤホンを耳にパソコンに向かう学芸員を見ても、決して西野カナの音楽を聞きながら仕事をする不埒な奴などと思わないで下さい。彼は今必死で、まだ誰も知らない美術の歴史を残そうとしているのですから。恍惚の表情で。

〈お詫びと訂正〉
前回のコラムにおきまして、私は「文書とかを撮影する時に使うアレ(押さえ)」の発明者につきまして、「某Y代市立博物館のT学芸係長様」と記しましたが、正しくは本県文化財業界の巨人・O倉大先生であらせられました。この場をお借りしましてO倉大先生とT学芸係長様に深く深く深く詫び申し上げます。お願いですから命だけは…。

初出:『熊本県立美術館だより View』163号 2017年12月
*****
これ2017年の記事なんですが、それと比べると今の物凄い変化に驚かされます。手入力はまずやらなくなって、google docsの音声入力で文字化するようになりましたね。
そのうちスマホの音声文字変換でテキスト起こして、音声を聴きながら修正するにかわり、今の主流はレコーダーのファイルをAmazon Transcribe で変換して手直しするようになってるみたいです(twitterでみた)。
いや、技術についていかないといけませんね。
[2020/03/10 23:00] | 未分類 | コメント(0) | page top
ビジツカンの道具 第8回「文書とかを撮影するときに使うアレ(押さえ)」
 我々学芸員は、よく写真を撮影します。アイドルの水着姿とかだったら良いのですが、生まれてこの方そんなものを撮影したことはございません。我々が撮影するのは主に絵画や彫刻などの美術作品、そして文書などの歴史資料です。

個人的な事をいきなり書かせていただくのもナニなのですが、私、資料類が大好き。画家さんのご遺族宅などでの調査で、たまたま画家さんの自筆メモが出てきたとき、特にそれが若い頃に書いた小説とかポエムだった日には、作品そっちのけで、「うわぁ~♡」とか「うひょっ☆」とかいう奇声をあげながら読みふけってしまいます。ちなみに、こういった症状をお持ちの美術館学芸員、時折おられるそうでして、業界内では「資料萌え」というのだそうです。本当かどうかは知りませんが。

いや別に、画家さんの恥ずかしい一面をご紹介したいからじゃないんです。作品だけでなく、制作にまつわる資料を一緒に展示した方が、作品の裏側にある画家の存在とか時代とか、そういうものがはっきりと浮かび上がってくるように思えるからです。そういったものは積極的に展示して、見ていただこうというのが私のスタンス。ならば、記録をとるために、そしてカタログに掲載するためにも、資料類はきちんと撮影する必要があります。そこで大活躍するのが「文書とかを撮影するときに使うアレ(押さえ)」なのです。

この道具、某Y代市立博物館のT学芸係長様が独自に開発し、県内各美術館・博物館に普及させたものでして、業界内の地下ルートのみで入手可能という極めてレアなブツです。この道具を構成するのは、①単三電池×2本、②先端が丸めてある縫い針もしくは木製の楊枝、③電池二本分と同じ幅のプラスチック板、④布テープ、以上の4つです。構造は極めて簡単。①の下に②が貼り付けられた③が敷いてあって、④でグルグル巻きにされております。ハイ、もう意味がわからないでしょうから写真をご参照下さい。こんな感じです。

10_第10回画像

我々が撮影する文書などの資料類は、ピラピラした一枚紙だったり、薄いパンフレットだったりします。一見撮影しやすそうなこれらの資料、実は結構難物でして、ピラピラしているだけに紙の端が浮いてしまったり、折り目がつきすぎて平面的に撮影できないことが多々あるのです。
そういう時に一般的に用いられるのが、「ケサン(卦算)」と呼ばれるガラスの延べ棒。これを資料の端に置けば、とりあえず資料は平面的になります。しかしそこにも問題が。例えばそれが、展覧会カタログなどに掲載するための写真撮影だった場合、どうしてもケサンが写り込んでしまい、いかにも「この資料、ペラペラしてたんでここで押さえたんで~す」という感じが出すぎてしまうのです。せっかくのカタログですもの、資料はできるだけ隅から隅まで見せてあげたいのが親心というもの。

ここで例の「文書とかを撮影するときに使うアレ」が登場です。この針の部分を文書の四隅に置いてやるとアラ不思議!ペラペラした文書が電池の重みで、目立たないかたちで押さえられるのです。針の先が写ったとしても、そこは印刷会社さんの超絶テクニックで消して貰えたら、もう万全。資料の平面性はさり気なく担保されるわけです。

もっともこの道具、丸めてはあるものの、尖った先端部を有するものですから、ご所蔵者には最初にお断りをしておくことが肝要です。本コラムに度々登場する元E青文庫のM宅大先生(現・G馬県立女子大講師)あたりでしたらもう慣れたものでして、「ここはアレ使いましょう、アレ。文書とかを撮影するときに使うあの押えですよ。」と、自ら率先して「文書とかを撮影するときに使うアレ」の使用を促してくれます。
さて、このあたりでみなさんお気づきと思いますが、この道具、便利な一方で正式名称が無いということが一番の弱点。このままではいけないという義憤にかられて、私の方で正式名称を考えてみました。候補としては、強そうなイメージで①「コスモタイガー」、①にスタイリッシュさを加味したイメージで②「エグザイル」、さらに攻撃的かつ和風のイメージで③「鬼の爪」、おさえるイメージで④「江夏」の計4つ。

このような案のもと、脳内で現場の様子をいろいろとシミュレーションしてみましたが、④ですと調査中に突然元野球選手の名前が出てくることになるので脳内却下。②ですと、あのグループは特定の企業ですし、なぜジャニーズ(初代)や劇団四季ではないのか?といった、いわば公務員としての公平性に関わる問題に発展しかねないのでこれも脳内却下。であれば、①「コスモタイガー」か、③「鬼の爪」あたりが良さそうです。
こうした考えに至り、喜々としてViewの編集担当であらせられるS藤学芸員に相談してみたところ、薄笑いを浮かべながら「…“押え”でいいんじゃないですか」との、至極真っ当な御返事。一抹の寂しさをおぼえた、38歳の春でした。あと3年でバカボンのパパと同年齢です

初出:『熊本県立美術館だより View』160号 2017年3月
*****
押さえで「江夏」ってどういう世代やねん、と思いながら、それぞれの抑えの名前使ったらいいんじゃないかと。広島城さんなら
「津田」、名古屋市博なら「岩瀬」みたいな感じ、あとは好みで。私なら「ギャラード」かなぁ。
[2020/03/03 23:00] | 未分類 | コメント(0) | page top
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