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紀要論文紹介
学芸員は仕事柄たくさんの論文に目を通します。興味の引いた論文をご紹介します。
※担当者の独断と偏見ですので、すみません…。

『名古屋市博物館研究紀要』第39巻、2016
長澤慎二「政友会における内藤魯一の位置」
愛知県会議員・衆議院議員をつとめた内藤魯一(ろいち)に関する論考。内藤は岐阜の板垣遭難時に暴漢をとらえた事でその名が知られるが、政友会での魯一のポジションについて書簡から考察する。なおタイトル「内藤魯一の位置」と韻を踏んでいる点が興味深い。

瀬川貴文「寄付による博物館資料の修復」
名古屋市博物館ではふるさと納税を利用しての寄付金の獲得を実施しており、そうした取り組みを紹介するもの。事業予算縮減の中、様々な取り組みを通じて文化財保存を模索する例として大いに参考になる。



『阪急文化研究年報』第4号、2015
宮井肖佳「小林一三の目指した文化ネットワークとその意義(三)」
小林一三(逸翁)が百貨店につくった茶室「福寿荘」の紹介を中心に逸翁の文化圏構想に触れる。特に茶道の大衆化に即した茶室の設置、また一都市一美術館構想など興味深い事実が紹介され、雅俗山荘(旧逸翁美術館)からの移転は逸翁本来の構想に立ち戻ることが示される。

正木喜勝「豊中グラウンドの誕生とその意義」
高校野球というと甲子園が思い浮かぶが、これは実は第10回目からの使用で、第1回(当時は全国中等学校優勝野球大会)は「豊中グラウンド」で開催された。この豊中グラウンドの構造に関する本格的な論考である。20世紀初頭におけるスポーツの持つ教育的要素と娯楽的要素の間で揺れ動く諸相を感じさせ興味深い。



『岡山県立博物館 研究報告』36、2016
重根弘和「真葛香山の虫明焼 -二つの十二ヶ月茶碗」
虫明焼は「むしあけやき」と訓み、岡山県の焼き物である。なお虫明とは地名である。この虫明をのちの帝室技芸員・真葛(宮川)香山が訪れ、花瓶などを制作し高い評価を得た。その香山が制作したとされる十二ヶ月茶碗は二種類ありこれらの比較を通じて時期と作者を検討するもの。

佐藤寛介「近代木彫の巨匠 平櫛田中と人間国宝の刀匠 宮入行平 ~親交の記録」
平櫛田中(ひらくし・でんちゅう)は岡山県井原市出身の彫刻家(出身は井原であるが10歳で広島県福山市の平櫛家の養子に入る。なお旧姓は田中である)。宮入行平は長野県坂城町の刀匠(人間国宝)である。本稿はこの二人の親交を書簡や作品から紹介するもの。宮入が制作し田中が用いた彫刻刀など実用的な要素のみならず、精神的な相乗効果についても触れられている。
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[2018/12/20 17:55] | 未分類 | page top
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